コールドケース 神戸・高2刺殺事件
6月7日、神戸地裁。
高校2年だった堤将太さん(16)をナイフで刺殺したとして、殺人罪に問われた被告の男(30)の公判が始まった。土日をはさんで4日間、集中審理が続いた。
裁判員裁判では、検察側と弁護側がどんな主張をするか、事前に整理される。
今回の争点は二つ。
殺意はあったのかどうか。そして、刑事責任能力を問える精神状態だったのかどうか、だ。
「傷つけようとはしたが、ナイフで刺すと死んでしまうかもしれないとか、痛いとかは全く分からなかった」
被告は法廷でそう述べ、殺意を否認した。当時は幻聴や妄想があり、事件を起こしたのはそのせいだ、と主張した。
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被害者参加制度を使って公判に参加した将太さんの父・敏さん(64)は、被告に直接質問する機会を与えられた。
「将太を刺したとき、あなたはどんな気持ちでしたか」
「気持ちは、何もないです」
「将太は刺されながら『痛い、痛い』と言った。それを聞いて何を思いましたか」
「何も、思いませんでした」
「(逮捕するために)自宅に警察が来た時、どう思いましたか」
「何も感じなかったです」
「警察が来る理由に覚えがなかったから?」
「そうです」「警察から(逮捕容疑を)説明されて、事件のことを少しずつ思い出しました」
「将太がどれだけ痛かったか、つらかったか、苦しかったか分かりますか」
「分からないです」。同じ経験をしていないから、と付け加えた。
中央の証言台に座り、正面を向いたままの被告。その被告を、横の検察側の席から険しい表情で見つめる敏さん。2人の視線は交わらない。
敏さんは被告にさらに問う。
「今ここにいる私たちを見て、どう思いますか」
「自分が生きていて申し訳あ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル